ゴージャスな文字盤が印象的な目覚まし時計ですが、製造年代は1920年代と大変古い時計です。
文字盤には、名前と住所が印刷されていますが、これは製造者ではなく、街の時計販売店の名前と住所です。目覚まし時間を合わせる針の近くに「DUFA」と小さな文字で印刷されているのが、この時計を製造した「Deutsche Uhrenfabrik社」を示しています。
文字盤以外は、一見外観は平凡に見えますが、1920年代の目覚まし時計は、外側にベルが付いた「へそ型目覚し」と呼ばれる本体の上にベルを乗せた大型な物がほとんどで、この時計の外観の意匠は当時としては相当に画期的であったことが伺えます。
さらに、この目覚まし時計にはびっくりするようなギミックが仕掛けられています。古い物でも新しい物でも、目覚まし時計には鳴っている目覚まし音を止めるための装置があります。古くは、ベルに打ち付ける打ち玉の付いた軸の振れを抑制するレバーであったり、新しい目覚まし時計では、ほとんどの場合、本体の天辺に鳴り止めのボタンがあります。
ところが、この時計は外から見る限りそのような目覚まし音を止めるための装置が一切見当たりません。
分解して見て初めて見つけることができたのですが、上部の取っ手を倒すことで、目覚まし音を鳴らす打ち玉の動きを抑制するようにピンが押し出されて目覚まし音が止まるような仕組みになっていました。向かって右側の取っ手の支持部分の内部に、外側からはまったく見えない細工がされています。
当時としては、最新の外観の構造に加えて、こうしたギミックを仕込んでいることには、かなり驚かされます。DUFA社は、ほんの短い期間だけ時計を生産していたようですが、相当に先進的な設計思想の元で時計作りをしていたことが伺えます。
機械は、当時のユンハンスの物と比べてもまったく引けを取らない出来の良さです。
状態ですが、当店での入手時にはまったく動作しない状態でした。ケースの外側のペイントは、ほぼすべて剥がれていました。内部の機械も無理に動かそうとしたのかオイルまみれで、しかもゼンマイが切れていました。機械は、部品単位に分解して洗浄を行い、切れたゼンマイを交換して組み立てて、調整を繰り返してようやく動作するようになりました。
ケースは、微かに残っていた塗料から判断して、オリジナルの塗装に近い色で再塗装をしています。本体が青で裏蓋が黒というツートンカラーの配色も当時のままです。塗装は、ぴかぴかにならないように、ヤレが出た感じにできるだけ近づけて行いました。
向かって左側の足のネジが所謂「馬鹿に」なっています。実用上何の問題もありませんし、外れることはありませんが、ネジを締め切ることができませんのでご了承ください。
さすがに生産から80-90年近い年月が経過しているので、絶対に遅刻が許されない生活における唯一の目覚ましとして使用することはお勧めできかねますが、「実働するアンティーク」としてお使い頂ければと思います。しっかりした造り、短命なメーカーの生産品、意匠の先取り、ツートンカラー、ギミックなど、ドイツ本国でも稀な、正にレア物中のレアな逸品です。
すべての部品を分解して洗浄して組み立てた後、注油して調整を行っています。
【DUFA/ドゥーファについて】
非常に短い期間だけ活動していた企業で謎が多いドイツの企業です。1920年頃の創業ですが、1930年にはキンツレが買収しています。DUFAは、Deutsche Uhrenfabrik(日本語で言うと、日本時計工業のような名前です)の略称です。
独逸屋では、アンティーク・雑貨ショップやオークションではなかなか見つけることができない、分解整備を施した飾り物ではない「使えるアンティーク」をお届けしています。当店独自の目覚まし時計への対応は
こだわり商品紹介【アンティーク目覚まし時計】をご覧ください。
商品価格には、ドイツからの送料が含まれています。